売却の途中で契約解除する場合
買う側の都合・売る側の都合の場合についてそれぞれ解説
売りに出している不動産を「買いたい」という方が見つかり、順調に契約の手続きを進めているにもかかわらず、買い主・売り主どちらかの都合で、売買を中止した場合、どのような事になるかを解説します。
『買い主側の資金繰りがつかず買えなくなった』
『売り主(あなた)が事情により売りたくなくなった』
『もっと高く買うという人が急に表れて、そちらに売ることに変更したい』
そのような状況の方は、この記事を参考にして下さい。
この記事で解説している「売却中止」のタイミングについて
なお、この記事で解説しているのは、
『買い主が見つかった後、買い主との売買契約を解除する場合』
の話です。
もし、あなたが知りたいことが、
『買い主が見つかる前に、不動産会社との媒介契約を解除する場合』
ということでしたら、下記の参考記事を参照してください!
関連記事:媒介契約の有効期間と解除および手数料について
買い主の都合で売買を中止したい場合
例えば、
『他にいい家(土地)が急に見つかってしまった』
『ローンを組もうと思ったら組めなかった』
などの理由で買う側が「契約を解除したい」と言った場合です。
まず、売り主(あなた)が一般個人の場合、クーリングオフ制度が適用されることはありません。その点はご安心ください。
クーリングオフ制度とは
売り主が、宅地建物取引業者の場合、買う側の都合であっても、一定期間内であれば、ペナルティなく契約解除できる制度。
関連記事:クーリングオフ制度とは
関連記事:自ら売主制限(8種制限)とは
タイミング的にまず重要となるのが
『手付金の支払い』
です。
手付金とは
「売買しましょう」という約束の証として、売り主が買い主に引渡しに先行して支払うお金です。通常は売買代金の5〜10%のことが多いです。なお、引渡し決済の時には、売買代金からこの手付金を差し引いた金額を残金として支払いますので、手付金は「余分にもらうお金」ではありません。
手付金をやりとりした段階で、契約は成立しています。ただし「手付解除」という考え方があり、買い主が手付金をあきらめる(=売り主が没収する)ことで契約を解除することができます。
売る側の感覚としては、キャンセル料をもらうイメージです。
ただし、次のタイミング、
『履行の着手』
の段階になっていると、話が違ってきます。
履行の着手とは
契約の内容にもとづく行動が実行されることをいいます
- 売り主が売却するための登記の手続きをした
- 買い主が購入代金を支払った
などが該当します。
ただし、例えば買い主が「購入代金を準備するために銀行から融資を受けた」という程度では、単に契約を履行するための準備をしただけとみなされ、履行の着手にはならないというのが一般的です。
履行の着手がなされている場合、
「手付金をあきらめる」
だけでは契約解除をすることはできません。
買い主はさらに「違約金」を支払う義務が発生します。
違約金は契約書を締結する段階で、お互い合意して決めます。
売り主(あなた)の都合で売買を中止したい場合
例えば、
『もっと好条件で買ってくれる人が急に見つかった』
『事情があって売ることを中止する』
などの理由で売る側が「契約を解除したい」と言った場合です。
この場合、手付金の考え方が逆になります。
例えば、契約の段階で買い主が売り主(あなた)に、200万円の手付金を支払っていた場合、売る側の都合で契約解除するのであれば、「倍返し」と言って、すでに受け取った200万円に、プラス200万円を上乗せして、計400万円を買い主に支払わなければなりません。感覚的には、売る側・買う側双方とも、同額のキャンセル料がかかってくるということです!
ただし契約解除に伴う手付金返還や違約金については、契約書をとりかわす段階で合意する必要があります。いざ、契約を解除する段階になってから、
「手付金を返す、返さない」
というようなことでトラブルにならないよう、書類の内容をきちんと確認しておきましょう!
また、違約金については、契約の解除によって、どちらかが金銭的損害をこうむった場合でも、支払う金額については契約で合意した違約金額となります。
例えば、違約金を400万円と決めていた場合、1000万円の損害が発生しても、請求できるのはあくまで400万円だということも知っておきましょう!