自ら売主制限(8種制限)とは
自ら売主制限(8種制限)の概要
自ら売主制限(8種制限)とは、宅地建物取引業者(宅建業者)が、一般の人に不動産を売却する際、あまりにも有利な立場になりすぎないように設けられた制限です。いわばハンディキャップのようなイメージを持って頂ければよいかと思います。
自ら売主制限(8種制限)の法的な位置づけ
宅地建物取引業法の第33条の2と、第37条の2から第43条までの条文には、宅地建物取引業者自身が売主となった場合の宅地建物の取引において、売主と買主の双方が守らなければならない規定が明記されています。
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一方で、第78条第2項には、これらの条文の規定は宅建業者間の取引では適用しないという規定が設けられています。これにより、宅地建物取引業法の第33条の2と、第37条の2から第43条までの規定は、宅建業者は自らが売主となって一般顧客に物件を販売する場合に限り、必ず遵守しなければならない規定になっています。
この宅建業者に対して課せられる規定が、通称「自ら売主制限(8種制限)」と呼ばれています。
不動産取引では、宅建業者自身が所有している宅地建物の物件を一般の顧客に対して販売しているケースがしばしばありますが、この組み合わせでは不動産取引の知識や経験が不足している買主側が、不動産取引のプロである売主側から一方的に不利な内容の契約を結ばされるおそれがあります。
これを防ぐ目的で設けられているのが自ら売主制限(8種制限)の意義です。自ら売主制限(8種制限)の規定により、売主側は一般顧客に対して宅地建物を販売する際に様々な制限が課され、一般の顧客は対等な状態で業者と取引を行えるようになります。
具体的な項目
- 自己所有に属しない物件の売買契約締結の禁止(第33条の2)
- クーリングオフ制度の適用(第37条の2)
- 損害賠償の予定額と違約金の合計を売買代金の2割以下にする制限(第38条)
- 手付は解約手付とし売買代金の2割を超える手付金の受領を禁止する制限(第39条)
- 民法よりも買主に不利となる瑕疵担保責任の特約の無効(第40条)
- 保全措置を講じないまま一定額以上の手付金等を受領することの禁止(第41条、第41条の2)
- 割賦販売契約の解除と割賦金の残金の請求は30日以上の期間を定めた上で書面で催告を行っても買主側から支払いが無い場合に限り実施できる制限(第42条)
- 所有権を留保したままの売買契約と引き渡し後の譲渡担保の禁止(第43条)
の8種類です。
なお、自ら売主制限(8種制限)は該当する条文の性質上、一般顧客が売主となっていて宅地建物取引業者が物件を買い取る立場になっている場合や、一般の顧客同士の売買取引において宅地建物取引業者を仲介する立場としてかかわる場合も適用対象外となります。
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